ロマンチストにはなれない
もし俺が、お前を好きだと言ったらどんな顔をするのだろうか。いや想像はつく。恐らくは、いつものように笑い「俺も好きだぞ」とでも言うのだろう。決してその言葉の真意を知らないままに。
時折その想像を試してみたい誘惑に駆られる。
ではその、"好き"の意味の違いを知ったら。同じように笑えるのだろうか、俺には想像がつかない。"親友"であるこの俺が、その隣でどんな思いを抱いているのかを知る事がどんなものなのか
自分がこんな感情をもつことになるとは思いもしなかった。人を思うことの苦しみを知り、眠れぬ長い夜を過ごすなんて想像もつかなかった。それも、バカだバカだと思っていた男に対して。
出会ったときから振り回され通しで戸惑いと苛立ちを感じていたはずだった。それなのにいつのまにか当たり前になって。その横に立つことを心地よいとすら思うようになっていた。
ただただまぶしかった。誰にでも向けられる裏表のない笑顔が、何の悪意もない言葉が、どんなに望んでも自分では作る事の出来ない屈託のない表情が。あこがれていた。
だけど気付いてしまった。その笑顔が、他の人間に向けられる度にざわめく自分の心に。あこがれというには強すぎる思いに。それはまるで恋に似ている。
彼が想う人が、その鈍さ故に気持ちに気付かないことを安堵する。
一人で空回りしているのを見てまだ大丈夫だと言い聞かせる。
もしも二人の恋が実る時があれば、その時自分はどうなってしまうのだろう
お題提供:ロメア様