It's a beautiful day.
「ね、手繋ごうよ」
当然断られると思って言った気軽な一言、軽く一蹴されると予想していた。
それなのに黒るんときたらぎこちない仕草ながらもオレの手をとったものだから
言い出したオレのほうが照れくさくなってきてしまって
オレはうつむくしかできなかった。
もっと恥ずかしい事黒りんとは沢山してるのに
そんな健全な交わりに、今までにない気恥ずかしさを感じてる。
そんなオレとは反対に、ふと見えた黒さまは涼しげなすまし顔。
なんだかいたたまれなくなってきた
「ねぇ黒るん、なんか恥ずかしいよぅ…」
「あぁ?お前が言い出したんじゃねぇかよ」
いつも通り怒ったような口調で黒るんがあきれてみせる。
「そうだけど…あ、何あれ、ちょっとあのお店見てこうよっ」
都合よく見つけた面白そうな露店を指差すと、繋いだ手をふりほどいて飛び出した。きらびやかな装飾品を並べて販売する若い男。オレは、サクラちゃんへのおみやげでもと売り物を物色する。ふと見ると、黒リンはさっきの場所に立ったまま興味なさそうに辺りを見回していた。オレは、見つけた可愛らしい髪留めを購入する。店の人がそれを包んでくれているのを見ていると、横から客だろう若い男に声をかけられた。
「よォ美人の兄さん。ヒマならオレ達と遊ぼうぜ」
どうもナンパのようだ。数えてみると、今日だけで三回目、それも全部同性から。この国ではそういった方向にはかなり開けているらしい。的違いな感想を抱きつつ断りの口上を考えていると、不意に後ろから、本当に不意打ちにオレの頭を抱え込んだものがいた。もちろん言わずと知れた黒るーだ。
(びっくりしたー)
オレが硬直している間に男たちは引き上げていった。見上げてみると黒みーがすごい目つきでさっきの男達をニラんでいる。あーあ、そんな目付きでニラんだらみんな怖がっちゃうでしょ?軽口は心の中だけにして、店の人から品物を受け取る。若い店員は、俺の後ろの黒さまにおびえるように、様子を伺っていた。
(全く黒さまは誤解されやすいんだから)
黒リンは怖い人なんだけど可愛い人なんだよ。なんて思っているのはファイだけだったりするのだけれど。内心クスクス笑いながら黒さまを見上げると、黙ったままぎこちない動作ながら手を重ねてきた。ほんの少し不機嫌そうな、それでいてなんだか嬉しそうな黒サマの横顔。オレは思い当たった。
ポンと手を打ちたい衝動にかられる。手を繋いでいたので実際にはできなかったが。
(オレがよその男に声かけられるのが気にくわない?)
行き当たった推測はおそらく間違ってはいないだろう。ここまではっきりと関係を主張されてなお、誘いをかける者はいるまい。
思わずほけっと黒さまの顔を眺める事になって、いつのまにか立ち止まっていたらしい。
「何だよ」
不審気な黒さまの顔がオレを見ていた。
「べっつにー。何で黒るんが今日はこんなにやっさしいのかなって思ってね」
ニヤニヤと笑いながら、オレは歩き出す。黒サマをひっぱるようにして