lovely


俺が局長の部屋へ行くと、局長は頓狂な声をあげた。その場にひっくり返りそのままずるずるとはって後ずさっていく。こんなに驚かれるとは少々心外だ。そんなにも変な格好だっただろうか。少し落ち着いて局長を見下ろすと、俺を見て口をパクパクさせていた。

「や、山崎…何だその、その格好…」

局長は俺の着ている女物の着物を指差して目をぱちくりさせる。その様は何だかとてもおかしかった。

「あぁコレですか?そのですね、これは…罰ゲームなんです。沖田隊長にバトミントンで負けてですね」

負けたほう一日女装という条件での一勝負、卑怯な手を使われたような気がしないでもないが負けは負けだ。おまけに、ついでだからと化粧までさせられた。

「入りますね」

ずっと廊下に突っ立ったままというのもあほらしかったので、局長の脇を通って室内へ入る。いまだひっくりかえったままの局長の前に座り、話しかけた。

「あ、コレ報告書です。目通してサインお願いしますね。それからこっちが副長からの預かり物で…あの、そんなに見ないでくれませんか?」

さっきからずっと、局長の視線が痛かった。そんなにも凝視されると何だか恥ずかしくなってくる。こんな格好は任務で何度もしているから、恥ずかしいはずなんてないのに。顔が赤くなりそうだった。目が合うと、局長はバツが悪そうに微笑む。それから何を思ったか、はって俺の目の前までやってきた。

「…あの、何か…」

小首をかしげ様子を伺うと至近距離で目が合って、がばっと…抱きつかれた。予想外の行動にとても驚いて、俺の心臓はドキドキいっている。戸惑っていると力強い腕が背中にまわされて力が込められた。ほおをこすりつけるようにおしつけられ、ひげがあったってこそばゆい。

「可愛い…似合ってる…」

「それはありがとうございます」

何故だろう。

女物が似合ってても、可愛いといわれても嬉しいはずはないのに

他の誰に言われた時よりも嬉しかった。




05'0906

文才が欲しいと思う今日この頃。迷惑かと思いますがリクエストをくれた方にささげます。愛を込めて(笑