Go to hell
「知ってました?室長。キリスト教で同性愛は御法度だって」
ここはあたたかいベッドの中。なのに何故オレは居心地の良い空間から逃れるようなことを聞くのだろう。
「もちろんさ。でもボクはキリスト教徒じゃないしね」
隣、触れるか触れないかの距離にいる室長が答えた。眼鏡を外した顔がすぐそばにある。ガラス越しでない眼がオレを見る。
器用な指先がおろしたオレの髪に触れた。
「そうっスね」
目の前の端整な顔が微笑んだ。
「人が誰を愛そうがその人の勝手だよ。そんなものにとらわれる必要はないね。キリストが間違っているんだ」
よく言った。さすが科学班室長、合理的な考え方をお持ちのようだ。くだらないしがらみからはとっくに解放されているらし
い。オレが何となく分かった気で眼をつぶると室長が言った。
「もしリーバー君がキリスト教徒だったら、どうする?」
オレは一瞬答えにつまった。
「どうって…苦しむ…?」
また彼は笑った。
「ボクは…」
髪を撫でていた手がオレの頭を引き寄せ、室長の胸に押し付けた。
「キミのためなら神も、世界だって裏切ってみせる」
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