日常

基本的にはいい人だと思う。そりゃよくサボったりフケたりするし結構無茶苦茶なトコもあるけれど、実は一番睡眠時間を削って一番働いている。みんなそれをしっているからこそあれだけ無理を言われながらもついていくわけだし、能力は十分過ぎるほどに有能な人だ。その意味では確かに尊敬しているけれど、この性格だけは誰か何とかして欲しいものだ。

「じゃあこれ、もうもらっていきますね」

室長の部屋から処理済の書類を引き取り戻ろうとした時。

「ねえ、リーバー君〜」

フイに腕を引っ張られオレはバランスを崩した。かかえこんでいた大量の書類をばらまきながら倒れこんだ場所は室長の上で、そのままひざの上に乗せられるように抱え込まれる。ただでさえ散らかった床にバサバサと紙が広がって落ちていくのを見てもう何かをあきらめた。

「……あの…コムイ室長…オレ、今仕事中なんっスけど」

肩に回された腕をやんわりとどけてみようとするが逆にその力は強くなり、はなさないという意思の表示なのか肩口に顔をうずめてきた。

「…あ、あの…」

首筋に息がかかり、呼吸の音が耳元に聞こえる。オレが微かに身を強張らせると室長が言った。

「ねぇ。今更だけれど、リーバー君白衣似合うね。可愛い…」

くすぐるように囁かれた言葉はオレを赤面させるには充分だった。可愛いなんて言われて嬉しくはないし、自分が可愛いなんて思ってもいない。でも、何か…
室長の手がシャツのボタンを外しかけたのに気付き、今更ながらオレは慌てた。

「ちょっ…何してるんですかっ…オレは仕事中なんっスよ。アンタだって…」

「休憩は必要だよ」

耳たぶに唇をつけられぺロッとなめられて、体の力が一瞬抜けそうになったが何とか持ち直す。

「誰かに見られたらどうするんっスか。リナリーに見られたら…困るでしょう…?」

忍び込んできた手の甲をつねりあげてつまみ出すが今日はなかなかしぶとい。見かけの割りに力の強い腕はどうあがいても離れなかった。

「…今日の夜にはアンタも休めるんっスよ。その時にして下さっ…」

いきなり頬をなめられてその場に飛び上がりそうになる。

「…本当?」

扱いにもいい加減慣れたこの人のこの反応は予想済みだ。

「室長の部屋行きましょうか?それともオレんトコ来ます…?」

少し振り返ってニヤリと笑っていってやるとやっと腕の力は緩んだ。オレは腕をのけて立ち上がり、散らばった書類を拾い集める。その間室長がずっとオレを楽しそうに見ていて、拾い終わってオレが立ち去ろうとした時白衣のすそをつかんだ。

「キス、してくれたら夜まで待てるかも」

裏を返せばキスしないと返さないというおどしに俺はあっさりと応じた。この人のせいで理性など麻痺しているのかもしれない。慣れって恐ろしいものだ。眼鏡にぶつからないよう気をつけて唇を近づけ、交わしたそれが触れるか触れないかの瞬間、ノックの音を聞いてオレ達ははなれる。一瞬交わした視線は共犯者のように秘密をこめて

「お疲れ様」

なんていいつつ互いに微笑んだ。



結局オレはこの人に振り回されるのも嫌いではないのかもしれない。気付いた一瞬愕然とし、それから妙に納得してしまう自分がいた。



この駄文、あっかぁに捧げます。いらないっていうなぁ〜!!