ダーク10title
1
愛に狂う、狂った愛
2
罪と罰
3
免罪符
4
邪笑
5
腹黒
6
歪んだ顔
7
茨の枷
8
君を騙す、罪悪感なんてない
9
硝子の破片
10
裏切り、嫉妬、独占欲
配布元⇒
リライト
1,愛に狂う、狂った愛
「どこにも行くなよ、お前は一生俺のものでいろ」
情事の後、うわごとのように繰り返す愚かな男。
「そんなの無理」
息苦しさに腕の中から抜け出そうとすると引き戻された。
「お前がいないと俺は死ぬから」
「好きに死んでくだせェ」
「お前は俺のモンだぜ。死ぬ時も一緒にきまってんだろ」
「好きにすれば」
首筋に手がかかる。気道を締め上げる手に力がこもった。
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2,罪と罰
夜遅く屯所へ戻ると、自室に総悟が眠っていた。眠り姫の布団へ近寄るとゆっくりと目が開いた。
「…おかえりなさい」
そしてまたすぐに夢の中に戻ってしまう。
すやすやと眠る小さな少年には穢れはなく清らかだ。
自分とは違って。
総悟は知らない。気付いてもいない。
常に俺に裏切られている事に。だから今、さっきまで俺が女と一緒だったなどとは微塵も疑いはしないないのだ。愛しい純粋で幼き恋人。
寝乱れた前髪をそっとのけ、いつくしむように寝顔を見つめる。不意にちりりと胸が痛んだ。決して責める事のない恋人のかわりに自分が自分を責める。犯した罪を責めるのは良心。せめられなじられるよりも苦しく重い罰。良心の呵責
哀れな魂は贖罪を求めて彷徨う
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8、君を騙す、罪悪感なんてない
「山崎ィ…あっ…もっと…」
薄暗い倉庫の中、睦みあう二人の影。押し殺した荒い吐息はひんやりとした空気に吸い込まれていった。特有の甘く気だるい空気が倉庫内を支配する。天窓から唯一の明かりが中へ差し込む。そこだけが、不健康的な内部と清浄な外をつないでいた。
「総悟ーおい総悟」
外から呼ぶ声が近づいてくる。2人のいる倉庫の鍵のかかった扉が幾度かゆらされ、やがてその声は遠ざかっていった。総悟はそんなこと露ほどにも構わず抱き合い続ける。土方は鍵のかかった扉の奥に総悟がいるなどとは疑ってもいない。ましてやこんな淫らなことをしているなどとは考えてもいないだろう。だが総悟に罪悪感などはない。ばれるかばれないかのボーダーにいかにぎりぎりまで近づけるか、ばれて全てがぶち壊れるかもしれないそのスリルだけが楽しませてくれる。もっと
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腹黒
「お帰りなさい土方さん。随分遅かったですねえ
どこ行ってやしたんですかィ?」
無邪気を装い訊ねると、何カッコつけてんだか顔をしかめた。煙草をくわえて何でもないように煙をはく。こころもち挙動不審
「ちょっとな」
バカじゃないのかこの人は。本気で俺が何にも知らないと信じてるのだ。こんな言葉で俺が納得してると思い込んでる。
「ふーん」
それに騙されてる俺も充分バカだけど。距離はあいているのに、甘ったるい香水の移り香が鼻先を掠めた。サイテー
「おやすみ」
狭い廊下ですれ違うほんの一瞬、表情が強張るのを横目でとらえた。それは罪悪感を感じている証拠。何にも気付かない俺を騙している背徳。そうもっと苦しめばいいのに。おんなじ痛みをもっと、味わえばいい
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