取り返しの付かない事というのがある。人の生死に関わる事がその一つだ。二度と元には戻らないからこそ余計に、恋しくなるのかもしれない。
―――世界は色を失う
殺した事について悔やんでいるのとは違う。たとえもう一度、戻ってやり直すことが可能だとしても僕は同じことを繰り返すだろう。僕の後悔は、ただ一言されど一言、言えなかったこと。
僕は何も言わなかった。竜崎に好きだと囁かれ、抱き締められた時黙って目を反らした。確かに僕はその時竜崎を好きだった。だがいずれ殺す人間にそれを言うのはひどく無意味な事に思えたのだ。今でも意味や理由はみいだせない。ただそれだけがひどく気にかかる。
それを解消する方法は皆無、原因だってもはや生きてはいない
嗚呼何てつまらない
目的は果たせたはずなのに、何も楽しくない
お前以外に僕を止められる奴などいはしないのに
お前はすでに土の下
ひっかかったもやもやした想いは日に日に大きくなる
どこまでもどこまでも巨大化し、身動きが取れなくなって
それでも大きくなるのはやめない
世界は僕を置いて回ってる。自分ではじめた戦いなのに
お前がいないと関われない
視界は色を失い、生の実感は遠い空の下。白と黒の灰色の街で魂だけ彷徨う
笑えばいいさ。お前を殺した僕が苦しむのを。何もしたくはないのに生きる事も死ぬ事も出来ない僕がたった一人なのを。嗚呼夢が見たい。希望が欲しい
詩のようになりました。
月は理性と感情が離れすぎて結びつかない子だと思います